新NISAが始まって、もうすぐ3年。「とりあえずコツコツ積み立てている」という方は多いと思います。

でも、ふと立ち止まって考えてみてください。その資産、将来どうやって“使う”つもりですか?

「増やし方」の情報はあふれていますが、「取り崩し方」の情報はまだ少ないのが実情です。この記事では、新NISA資産を取り崩す3つの方法の違いと、よく誤解されている「4%ルール」の正しい意味を整理します。

積立世代が、そろそろ「出口」を意識し始める時期

金融庁の公表資料によると、NISA口座数は制度開始の2014年には492万口座でしたが、2025年6月末時点で2,696万口座まで拡大しました。累計の買付額も63兆円に達しています。

NISA口座数の推移(2014年〜2025年6月末)

出典: 金融庁「NISAの利用状況」(2025年6月末時点、2025年9月24日公表資料)

2024年の新NISA開始から積立を続けてきた方は、まだ「資産を使う」段階ではないかもしれません。それでも、教育費や住宅購入、あるいは老後資金として「いつか取り崩す」ことを前提に積み立てているなら、早いうちに「出口の考え方」を知っておくこと自体に意味があります。取り崩し方次第で、同じ元手でも資産がもつ期間(資産寿命)が変わってくるからです。

取り崩しの3つの方法

証券会社が提供する投資信託の定期売却サービスでは、主に次の3つの方法から選べます。

① 定額売却(毎月決まった金額を売る)

「毎月5万円」のように、受け取る金額を固定する方法です。毎回の受取額が一定なので生活費の管理がしやすい一方、相場が下落している局面でも同じ金額を取り崩そうとすると、より多くの口数(投資信託の持ち分)を売ることになり、想定より早く資産が目減りするリスクがあります。

② 定率売却(残高の一定割合を売る)

「保有資産の4%」のように、割合を固定して売却する方法です。売却する金額は、その時々の基準価額(投資信託の値段)によって変動します。資産が減れば取り崩す金額も自動的に減るため、資産寿命を延ばしやすい傾向があるとされますが、相場が下落している局面では受取額が想定より少なくなる可能性があります。

③ 期間指定売却(受け取る期間を決めて等分する)

「80歳までに使い切る」のように、受取期間を先に決めて、その期間で等分して売却する方法です。ゴールから逆算して計画を立てやすい一方、定率売却と同様に相場環境によって受取額が変動します。

どれが「正解」ということはなく、生活費の安定を優先するか、資産を長持ちさせることを優先するかで選び方が変わります。

誤解されやすい「4%ルール」の正体

取り崩し方法を調べると、必ずといっていいほど出てくるのが「4%ルール」という言葉です。これは、米国の大学で行われた研究(通称トリニティ・スタディ)をもとにした考え方で、「株式と債券に分散した資産を年4%ずつ取り崩しても、30年間で資産が尽きる確率は低い」という検証結果から来ています。

ここで注意したいのは、本来の4%ルールは「毎年、その時点の残高の4%を取り崩す」方法(=定率売却)とは異なるという点です。トリニティ・スタディが検証したのは、「初年度に資産の4%にあたる金額を取り崩し、2年目以降はその金額を物価上昇率に合わせて調整しながら取り崩し続ける」という方式です。つまり、定額売却と定率売却の中間のような考え方に近いものです。

「4%ルール=定率で4%ずつ取り崩せばいい」と単純化して紹介されている情報も見かけますが、本来の研究内容とはやや異なる点は知っておいて損はありません。また、このルールは米国市場のデータをもとにしたものであり、取り崩し期間が30年を超える場合や、日本の市場環境にそのまま当てはめてよいかは別途検討が必要とされています。

資産寿命を延ばすための実践的な工夫

絶対的な正解はありませんが、取り崩し方を考えるうえで押さえておきたい視点を3つ紹介します。

  1. 生活費の土台は「定率寄り」で、下限も決めておく 定率売却は資産寿命を延ばしやすい一方、相場下落時に受取額が大きく減るデメリットがあります。証券会社の定期売却サービスには「売却上限金額」を設定できる機能を備えたものもあり、割合と上限額を組み合わせることで、受取額の振れ幅をある程度コントロールできます。
  2. 生活防衛資金を別に確保しておく NISA資産とは別に、1〜2年分の生活費を現金で確保しておくと、相場が大きく下落している局面では、その現金を先に使い、NISAからの取り崩しを一時的に減らすといった調整がしやすくなります。
  3. 「いつから」「いくら」取り崩すかを早めにイメージしておく 教育資金なら使う時期が決まっていますが、老後資金は何年取り崩すか自体が不確実です。公的年金の受給開始時期や退職金の受け取り方と合わせて、取り崩しの開始時期・ペースをおおまかにでもイメージしておくと、相場変動時に慌てずに済みます。

まとめ

  • 新NISAの取り崩し方には、主に「定額」「定率」「期間指定」の3つの方法があり、それぞれメリット・デメリットが異なる
  • 「4%ルール」は本来、初年度の金額を固定しインフレ調整しながら取り崩す方式であり、「毎年残高の4%」を取り崩す定率方式とは厳密には異なる
  • まだ取り崩し段階でなくても、出口の考え方を早めに知っておくことで、将来の資産設計がしやすくなる

積み立てる時期は「とにかく継続すること」が大切ですが、取り崩す時期は「どう使うか」の設計がものを言います。ご自身のライフプランに合わせて、一度「将来、どう取り崩すか」を考えてみてはいかがでしょうか。


出典・参考